2019年度版!海外渡航者の健康管理について正しく理解しよう!

  健康管理  

Q. 社内で初めて海外出張をする社員がいます。
渡航歴はあるのですが、ハワイなど先進国のみで、今回の出張先はベトナムです。
出張者への健康管理として気をつけるべきことを教えてください。

【解説】

A. 法令では、業務形態(駐在、出向、出張)にかかわらず、海外に6ヶ月以上滞在する者への渡航前後の健康診断の実施を事業主に義務づけています。
しかしながら、滞在が6ヶ月未満で法令上義務がなくとも、健康診断を受けたほうが望ましいといえます。
健康診断のみならず、予防接種や出張可否判定など、海外渡航者の健康管理を行うために参考となる詳細情報をご紹介します。

■2019年度版、海外渡航者の健康管理

法務省の出入国管理統計を見ると、日本からの出国者は、年々増えており、2018年度は年間1,700万人でした。
これに対して外国からの入国者は2011年以降、3,000万人を超える勢いで増え続けています。
働く現場でも、海外で働く労働者の傾向として以下のような特徴がみられます。

・ 数そのものの増加
・ 途上国で働く人の増加
・ 駐在型よりも、出張型(短期)が増えている
・ 中高年の割合の増加、それとともに生活習慣病など持病ありの出張者の増加
・ 中小企業の半分以上が海外出張を実施

ベトナムへの出張とのこと、健康診断以外にどのような準備したらいいのかを一緒に確認をしていきましょう!
(ここでの海外出張の定義は「会社から指揮命令が出ているか」どうかではなく、「海外で働いた期間がある」と定義します)

■海外派遣労働者の健康診断(労働安全衛生規則第45条の2)

法令では、海外派遣労働者の健康診断(労働安全衛生規則第45条の2)に、以下のように記されています。

労働者を6月以上海外に派遣しようとするときは、あらかじめ次の項目の健康診断を行わなければなりません。また、6月以上海外勤務した労働者を帰国させ、国内の業務に就かせるときも、健康診断を行わなければなりません。

海外出張者の健康管理対策として唯一法令に明記されている内容になります。
本法では、業務形態(駐在、出向、出張)にかかわらず、海外に6ヶ月以上滞在する者への健康診断の実施を事業主に義務づけています。

では6ヶ月未満であれば必要ないでしょうか?

そんなことはありません!
法令上義務がなくとも、健康診断を受けたほうが望ましいといえます。
直近の健康診断に心配な点がある方、持病を持っている方は、出張前近月中の定期健康診断結果がない場合は、出張前健康診断を受けることが適切です。
「渡航関連医療機関ガイド全国版」で調べると良いでしょう。
もしくは、普段使用している定期健康診断実施機関に問い合わせてみましょう。

■海外出張者の健康管理対策は、事業者にとっては安全配慮義務にあたります。
日頃からの健康情報の提供を心がけましょう

* 出張させる国の医療情報や環境情報を提供しましょう
たとえば今回の出張先のベトナムはバイク王国ともいわれるほど、たくさんのバイクが走っており、交通事故が頻発します。
怪我のリスクがあります。
破傷風のワクチン接種が必須です!

このように国の環境を知ることはとても大切です。
厚生労働省検疫所サイト「FORTH(フォース)」にて、感染症の流行情報と渡航先ごとの推奨ワクチンを調べることができます。

* 出張中の健康管理マニュアルの作成
国によって、かつ、先進国か途上国かによってインフラの整備や衛生面で大きな違いがあるため、それぞれの地域別のマニュアルが必要です。
よく出張する国についてはマニュアルを整備することをおすすめします。

* 感染症対策
ベトナムなど東南アジアでは、デング熱やマラリアといった蚊が媒介する感染症が流行しています。
デング熱は特に増加中です。
蚊に刺されると感染しますので、蚊の対策が感染症対策になります。
防虫対策は必須です。
マラリアについては、予防薬の発展により流行が抑えられていますが、デング熱は流行しているうえ、ワクチンも予防薬もありません。
防虫対策についての学習ができるこちらの動画「蚊が媒介する感染症の予防(動画)」で詳しいことがわかります。
ぜひご参照ください。

* 携帯薬リスト
事前に滞在日数分より数日分多めの事前処方(保険が適用されず10割負担)を受けることが望まれます。

* 受診方法指導
ベトナムなど発展途上国の国立病院は貧困層を対象にしており、日本からの旅行者が受診するのは難しい環境です。
私立病院の受診方法や、施設案内といった情報を入手できるようにサポートしましょう。
持病があれば英文翻訳の診断書(処方薬成分名記載のもの)を持参させましょう。

* 定期健康診断の事後措置
海外出張を視野に入れた判定と指導を、定期健康診断の都度、丁寧に実施することが大切です。

* 派遣の可否判定の原則
派遣の可否判定の原則は次の3つです。

1. 心身ともに健康な者を選抜
2. 選抜は辞令の出る1ヶ月以上前に行う
3. 選抜後から辞令が出るまでの間に、産業医が派遣可否判定を行う

労働者の高齢化と人材不足に伴い、持病のある方の海外出張が増えています。
出張者の主治医との連携も望まれます。

* 健康面で問題のあるものが選抜されたときの対応
派遣不可基準は法令上も特になく、派遣可の目安もありません。
ただし、次の4項目は必要条件として挙げられます。
◼️ 病状が安定していて、治療方針が明確に決定していること
◼️ その治療が現地で十分受けられること
◼️ 派遣者本人に病識があること
◼️ 国内からの経過観察ができる体制が整っていること

* 予防接種
ベトナムであれば、A型肝炎と破傷風とB型肝炎が推奨されるワクチンとなります。
たとえ1週間の出張であっても、バイク王国での傷からの破傷風感染、食べ物からのA型肝炎の経口感染は懸念されます。
狂犬病も、と言いたいところですが、3回で約5万円と高額で、かつ出国前に約3週間間隔での接種が必要であるため、時間が足りないというケースが多々あります。
予防接種は事前に計画を立てて、準備をしておくことが大切になりますね。

【旅行前に接種しておきたいワクチン】


* 短期:1ヶ月未満の滞在、長期:1ヶ月以上の滞在
** 小児期に接種している者には1回の追加接種を行なう
*** 成人には通常1回の追加接種を行なう

参照サイトはこちら

■旅行保険への加入

既往症カバー型の保険も検討したほうが良いでしょう。
クレジットカードにも海外旅行保険が付帯されていますが、補償の限度額が低く設定されています。
健康に不安のある方は別に海外旅行保険に加入することをお奨めします。
慢性疾患(例、糖尿病)を抱えている社員が旅行保険に加入していない場合、出張先で低血糖発作で倒れると200〜300万円の治療費がかかることになります。

過重労働対策

* 頻回出張者の把握と産業医の面談
どの社員が何回どこに出張しているかを把握しましょう。
単に労働時間のみではなく頻度とレベルを見ます。
海外に出して、みなし労働時間(1日8時間で残業なし)とし、残業時間数を減らすために出張で差し引きしている企業もあります。
出張の移動時間は労働時間に含めないことが原則ですが、移動中に資料作成などをしているのであれば労働時間に算入されます。

海外出張中に生じる健康問題

一番多いのが「旅行者下痢症」です。
途上国に1ヶ月滞在すると20~60%の人が発症するといわれています。
通常は数日の経過で軽快し、命に関わることはありませんが、2日間くらいは下痢で大変辛い状況が続きます。
一旦かかると4割の方は、旅行日程(出張日程)を変更せざるえない傾向があります。
日本では「下痢止めを使わずにすべて出してしまったほうがいい」と言う方が多いのですが、海外で起こる下痢は止めても構わないというコンセンサスが確立しています。
薬剤を2~3日服用しても下痢症状が改善しない場合は、医療機関を受診するようにしましょう。
ただし、例外として、血便と高熱を伴う下痢については下痢止めを使わずに医療機関を受診することが望ましいとされています。
もちろん持病のある方や、嘔吐により水分摂取ができない方も受診が望まれます。
下痢止めや抗菌薬などは事前処方され、薬の使い方の指導を受けることが大切です。
その他に多い健康問題としては、風邪、便秘 不眠、時差ボケ、などが挙げられます。

海外勤務者のメンタルヘルス対策

東京に本社のある海外派遣企業155社の調査によると、半分の企業で駐在員にメンタルヘルスの問題が発生、そのうち8割が駐在員を途中帰国させているというデータがあります。
派遣前に把握することは困難であることから、セルフケア教育、ネットワークの構築【現地での相談対応、国内からの相談対応】がとても大切になってきます。
海外で現地のメンタルヘルスクリニックに行くことはとても困難であり、受診が必要な状況であれば、こじれる前に帰国を選ぶことが大切です。

まとめ

〔出張前〕と〔出張中〕と〔帰国後〕を、ベトナムを具体例にして見てきました。

〔出張前〕
健康診断【法定】
出張可否判定
健康教育、情報提供、生活指導、個別相談
予防接種と携帯医薬品の準備

〔出張中〕
医療相談体制(出張先、日本国内から)サポート
医療機関受診の支援
必要時には健康診断支援

〔帰国後〕
健康診断【法定】
輸入感染症対策
帰国後の適応についての経過観察

法令で規定されてはいないものの、渡航者の健康管理感染症対策は企業にとって重要な戦略です。
心身ともに調子を崩しての日程変更や途中帰国が企業へ与える損失は計り知れません。
予防できるものは、予防して、日本でも海外でも安心して働くことができるように整えることが必要です。


コメント・ご質問フォーム

メールアドレスが公開されることはありません。